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LIVE REPORT

過去最高かつファン待望のクライマックス
舞台「銀河英雄伝説 第三章 内乱」
2013.3.31~4.13 青山劇場

 


 2011年1月にスタートした舞台「銀河英雄伝説」は、シリーズ7作目にして、ついに過去最高かつファン待望のクライマックスを迎えた。はるか未来の銀河を舞台に、銀河帝国と自由惑星同盟が宇宙の覇権を競う様を描いた、田中芳樹氏の大ベストセラー小説を原作にした本作。初演の「第一章 銀河帝国篇」、2012年4月の「第二章 自由惑星同盟篇」をはじめ、これまでの作品はいずれも帝国/同盟の二大勢力どちらかの視点で描かれていたのに対し、今作「第三章 内乱」では初めて両陣営の主要キャストが一堂に会するというのだから見逃せない。“戦争の天才”という共通点を持つ宿命のライバル、銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーを軸に、二つの国それぞれの“内乱”が巧みに舞台上で交錯。ヤンを演じた河村隆一をはじめ、Kis-My-Ft2の横尾渉と二階堂高嗣、そして貴水博之、中川晃教、間宮祥太朗等、豪華キャストが怒涛の熱演を繰り広げて、手に汗握る濃厚なスペクタクルロマンを味わわせてくれた。
 

 

 物語は、銀河帝国の皇帝が後継者を定めぬまま死去したことから始まる。これに乗じて帝国の実権を握ろうと、特権を貪る門閥貴族に内戦を仕掛けてゆくラインハルト。そんな混乱状態の帝国に同盟軍が攻め込んでこないよう、ラインハルトは同盟にスパイを送り込み、同盟軍内の不平分子を扇動してクーデターを起こさせる……というのが、本公演の粗筋だ。つまり、一つの舞台の上で帝国と同盟、二つの内乱が同時進行してゆくわけだが、そんな複雑なストーリー進行を巧みに処理する映像と舞台装置に、まずは感嘆。オープニングから両軍キャストが登場しながらも、セリを多用することで空間を分け、それぞれの登場人物がどちらの陣営に属するか、どちらの国で起きている出来事なのかを明確にするのだから見事だ。とりわけヤンとラインハルト(間宮祥太朗)が別のセリに乗って、互いに見つめ合うシーンでは、二人の分かちがたい宿命を感じてゾクリと胸が震える。

 しかし、何よりも素晴らしかったのは、演じるキャラクターと一体化した俳優陣の芝居であった。キャストの多くが、既に同じ役を過去のシリーズで演じているため、個性豊かな登場人物たちに対する理解は非常に深いものとなり、原作を知る者も知らぬ者もすべて“銀河英雄伝説”の世界へとグイグイ引き込んでゆく。その筆頭が主演の河村隆一であるのは言うまでもなく、“不敗の魔術師”と讃えられながら“生命より大事なものなんてない”と言い放つ軍人ヤンの矛盾に満ちた、それがゆえに人間くさい本質を、飄々とした佇まいと穏やかな口調の中に滲ませていたのは“あっぱれ”の一言。もともと大変な原作ファンであるだけに、副官フレデリカ(はねゆり)に無意識レベルの恋心を覗かせるヤンの奥手ぶりもキッチリ描写して、“まさしくヤンそのもの”と絶賛された前作「第二章 自由惑星同盟篇」に続く名演を見せてくれたのが嬉しい。

 対して、ヤンの宿敵ラインハルトを演じた間宮祥太朗も、朗々たる発声と華やかなビジュアル、そしてマント捌きも鮮やかな堂々たる所作により王者の風格を漂わせ、20歳で帝国元帥の地位にまで上り詰めた“常勝の天才”の非凡さを五感に訴えかける。一方、敬愛する姉アンネローゼ(白羽ゆり)の前では無邪気な少年の顔を垣間見せ、その姉を貴族軍に侮辱されると烈火のごとく怒り、親友キルヒアイスを喪ったときには名将の見る影もなく憔悴。感情の起伏激しいエモーショナルな芝居で、青さとカリスマを併せ持つラインハルトというキャラクターを的確に表現する彼自身、なんと19歳というのだから舌を巻くほかない。

 一方、これが3度目のキルヒアイス役となる横尾渉は、過去作と同様に実直な台詞回しでラインハルトへの忠誠心を表しつつ、彼を庇って命を落とす場面では完全なる主役に。“ラインハルトさま……宇宙を手にお入れください”と息絶える、原作でも屈指の名シーンを鬼気迫る演技で魅せて会場の涙を誘う。また、初めてウォルフガング・ミッターマイヤーを演じた二階堂高嗣も、熱血漢な個性が役柄とピッタリ。奇略を弄するパウル・フォン・オーベルシュタイン(貴水博之)への反目も露わに、人間味あふれる熱い“ミッターマイヤー像”を描き出して、戦闘シーンではメリハリのある美しい動きを披露。ステージで鍛え抜かれたダンス力はさすがである。

 ミッターマイヤーが“炎”とするなら、冷ややかな“氷”として絶妙の対比を為したのが、オーベルシュタインだ。地獄から這い上ってくるような抑揚のない声音と機械のように無機質な動きにより、自らの野心のためにラインハルトを利用する義眼の参謀の怜悧狡猾を表して、得体の知れない存在感を舞台に印す。オーベルシュタインという人物の冷徹を際立たせる、その不気味なオーラは、まさしく怪演と呼ぶにふさわしい。

 また、ピリピリとした緊張感を漂わせるシリアスなストーリー展開の中で、唯一、観客の心を温める役割を担ったのが、中川晃教演じるオリビエ・ポプラン。女好きのエースパイロットらしい陽気なトーンで、同盟軍イゼルローン要塞の日常を生き生きとコミカルに描き、単座式戦闘艇での空戦シーンでは同僚のイワン・コーネフ(中村誠治郎)と共に、その美声を聴かせる場面も。その他、宝塚歌劇団出身の白羽ゆりを中心としたパフォーマンス、門閥貴族軍の盟主ブラウンシュヴァイク公を演じた園岡新太郎のオペラ歌唱等、演者の持ち味を活かしたミュージカル的手法を多く取り入れ、より多角的に楽しめる演出になっていたのも特筆すべき点。作品を重ねるごとに練り込まれ、進化を続ける『銀河英雄伝説』という舞台シリーズの醍醐味を、そこに感じることができた。
 


 原作の中でも特に核となるエピソードを詰め込んだ公演だけに、それら個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、現代にも通じる奥深いメッセージを秘めたものに。民主主義の名のもと、衆愚政治に堕ちた政府を救うため、フレデリカの父が率いるクーデター軍と戦わざるをえないヤンの苦悩。門閥貴族軍に勝つために、200万人の民衆を見殺しにしたラインハルトと、それを知ったキルヒアイスの間に生まれた確執。結果、ヤンは若かりし日に想いを寄せていた反戦派の闘士ジェシカ・エドワーズ(馬渕英俚可)を、ラインハルトは自らの半身ともいえるキルヒアイスを喪った。ことにジェシカの虐殺シーンは生々しく、目を背けたくなるほどに痛々しいものであったが、自分の信念を貫いた彼女の死こそ、常に矛盾と不条理をはらんだ“人の世”の象徴である。2月の制作記者会見の席で、河村は「もしかしたら自分たちが信じているものの奥には、もっと違う秘密があるんじゃないか――そんなことを探りながら楽しんでいただけると思います」と語ったが、そこにこそ『銀河英雄伝説』が累計1500万部という大ベストセラーに到った秘密を見出せるだろう。そして、そんなディープなメッセージをエンターテイメントという形に昇華した、この舞台シリーズこそ、嘘と争いがはびこる現代に上演され続けていくべき作品であるに違いない。


 ラストシーンではヤンがジェシカの、ラインハルトがキルヒアイスの墓標の前で心情を吐露。「必ず宇宙を手に入れる」と決意を新たにするラインハルトに、「私は今、見上げている宇宙を守れるんだろうか?」と、いまだ己の中にある矛盾から逃れられないでいるヤン。敵対し、まるで異なる想いを持つ二人は、奇しくも同じ痛みを抱えて、別々の道を歩いていくのだ。いったん幕が閉まった後のカーテンコールでは、男女のメインキャストが順にテーマ曲の「Searching for the light」を歌い継ぎ、最後に曲を書き下ろした河村が登場すると、出演者全員での大合唱へ、その流麗なメロディと澄んだ歌声は、全オーディエンスの胸を感動の涙で濡らした。

 いつの時代も、人は戦い、傷つき、愛する者を喪って、ままならない現実に葛藤しながら、それでも前に歩いてゆく――。そんな人類不変のテーマに、真っ向から挑んだシリーズの次作は、8月1~6日に日本青年館で上演される「初陣 もうひとつの敵」。ラインハルトとキルヒアイス、二人の初陣を描く本作は、ある意味で『銀河英雄伝説』の最初の始まりとも言える作品である。ラインハルト役での進境著しい間宮祥太朗、そして、本シリーズには初の参加となる橋本淳がキルヒアイス役、ヤン・ウェンリー役には田中圭と、現在発表されているキャストにも注目が集まるところ。将来、帝国を担うことになる15歳の二人が、どんな初陣を遂げ、舞台『銀河英雄伝説』の歴史に、いかなる1ページを加えてくれるのか? 今から期待は膨らむばかりだ。

 

(取材・文/清水素子)

【NEWS!!】
シリーズ最新作、8月上演決定!!

舞台「銀河英雄伝説 初陣 もうひとつの敵」
2013年8月1日(木)~8月6日(火)
東京・日本青年館 大ホール
チケット料金:
S席 7,900円 / ギャラクシー1階席 6,800円 / ギャラクシー2階席 6,000円

<キャスト発表!>
間宮祥太朗 橋本淳/
白羽ゆり 根本正勝 藤原祐規/
三上市朗 岸祐二/三上俊 鈴木健介
広田レオナ/田中圭 ほか

a-ticketにてチケット先行予約受付中!(~5月15日23:59まで)
http://www.avexlive.jp/gingauj-at
  
★詳細は決定次第、オフィシャルサイトにて随時発表! お楽しみに!!
http://www.gineiden.jp/uijin/