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LIVE REPORT

舞台「銀河英雄伝説 初陣 もうひとつの敵」
策略の糸に張り巡らされた運命的初陣

 1982年の発刊以来、累計1500万部の売上を誇る田中芳樹の大ベストセラー小説『銀河英雄伝説』。遥か未来の宇宙を舞台にした壮大なスケールゆえに、舞台化は到底不可能と言われた本作も、斬新な演出と最新の映像技術によって2011年に初演を果たし、大好評を博して次々とシリーズ上演されてきた。

 銀河帝国と自由惑星同盟という二つの国家が宇宙の覇権を争い、数多くの登場人物が人生を賭して紡ぎ上げる、この傑作スペースオペラの中でも、二大ヒーローと言えるのが銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーという二人の天才軍人。そして、その二人が歴史の表舞台に上がる前の姿を描いたのが、この夏、第8作目として上演された「銀河英雄伝説 初陣 もうひとつの敵」である。

 何と言っても最大の見所は、第6作目「銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて」から続けてラインハルトを演じてきた間宮祥太朗が、今作で初の主演を務めるということ。前作、前々作と、類まれな美貌を持った“常勝の英雄”という難役を緻密な分析力と高い演技力で具現化してきた彼だけに、周囲の期待は大きく膨らんでいたが、その期待は決して裏切られることはなく。まさしくラインハルトが乗り移ったかのような堂々たる芝居で舞台を引っ張り、「銀河英雄伝説」の核となる“人間ドラマ”を、多彩な感情/肉体表現で見事に描き上げてみせた。

 物語は15歳でラインハルトが迎えた初陣から、ラインハルトとヤンが初めて戦場で会いまみえるアスターテ星域までの約5年間を回想形式で描いたもの。その間に武勲を重ね、栄達の階段を上がってゆくラインハルトであったが、姉・アンネローゼが皇帝の寵姫であったため、その威光を借りたに過ぎない“生意気な金髪の孺子”と、帝国軍内では嘲笑の対象になっていた。加えて、アンネローゼに皇帝の寵愛を奪われたベーネミュンデ侯爵夫人の怒りは凄まじく、弟のラインハルトにまで毒牙を向けることに――。同盟軍のみならず、そんな帝国内にはびこる“もうひとつの敵”との戦いが、本作の主軸である。

 まず、幕が開けるや驚かされたのが、副官・キルヒアイスと共にスクリーンに映った星の大海を見つめる間宮ラインハルトの存在感! 張りと艶を備えた声音といい、抑揚を押さえた台詞回しといい、長い金髪を靡かせた威厳ある立ち姿といい、不遜なオーラたっぷりで、わずか20歳で上級大将にまで上り詰めた“戦争の天才”という現実離れした人物像を、十分な説得力をもって観客にアピールする。ヤンを演じた田中圭も、ゲネプロ後の会見で「キャストの中で一番若いのに、ちゃんと座長として存在できる。生意気なところもあるけれど、その生意気さが良い効果として皆に伝わって、間宮を信頼して芝居できる空気を創ってくれている」と高く評価。奇しくも彼自身がちょうど20歳になったばかりであり、そんな若さに似合わぬリーダーシップも、ラインハルトとの共通点なのかもしれない。

 おまけに場面が4年前に遡って少佐時代となると一転、声のトーンも高く、上官にも感情的に食って掛かって、彼を諌めるキルヒアイスの落ち着いた様子とは対照的な歳相応の子供っぽさを隠さない。だからこそ物語が進むにしたがって、経験を積み、成長してゆくラインハルトの些細な動きや声音の変化が際立つのだ。その一方、幾つになっても無二の親友・キルヒアイスには柔らかな表情を見せ、姉のアンネローゼを中傷する輩には烈火のごとく怒って容赦ない復讐の鉄槌を下し、いかに彼らがラインハルトにとって大切な存在であるかを浮き彫りに。そんなラインハルト最大の魅力ともいえる、冷徹な軍人としての顔とのギャップを自然に醸し出してみせる芝居勘の良さ、キャラクターに対する深い理解には、まったく頭が下がる。

 そのジークフリード・キルヒアイス役には、これがシリーズ初参加となる橋本淳が抜擢。鈴を転がすような声が耳に心地よく、ラインハルトとの会話は、まるで音楽を聴いているようでもあった。181cmの長身も舞台に映え、しばしば作中で“赤毛ののっぽさん”と呼ばれるキルヒアイス役にはヴィジュアル的にもピッタリ。無限の優しさと芯の強さを持って「ラインハルト様の両脚は、大地を踏みしめるためではなく、宇宙を翔けるためにあるのですから」と語り掛ける様も包容力たっぷりで、二人の信頼関係の厚さをしっかり伝えてくれた。会見でも「ラインハルトは間宮くん自身にも似てる役。彼が太陽であるなら、僕は、その光や熱を和らげる木でありたい」と、補佐役としての自らの在り方を決意表明。対する間宮も「ラインハルトは未来を見据え、ヤンは過去の歴史に興味を持ち、キルヒアイスは目の前に起こった“今”を対処していく人物。キルヒアイスは僕やラインハルトに無いものをたくさん持っていて、すごく魅力的」とリスペクトを示していた。

 一方で「今回、切り取っているのは『初陣』という一つのシーンなので、そこに描かれているだけのヤンを描けばいいと思っている。人気のあるキャラクターだからといって、物真似をするつもりはないし、みんなが求めるヤンとかけ離れないところで、自分なりのヤンがあればいい」と語っていたのが、これまた初めて「銀河英雄伝説」の舞台に立つ田中圭。彼の演じるヤンは同盟側の主人公とはいうものの、今回は帝国側の物語を軸に進むため出番は断片的で、完全なる“受け身”の芝居を要求される役どころだ。そこで田中はしなる柳を彷彿させる力の抜けたムードを漂わせて、降りかかる難題を受け流す“戦争嫌い”のヤン像を的確に描写。舞台に立っている時間が少ないぶん、帝国組にも客観視したアドバイスが出来たとのことで、間宮も「“おまえは自分を信じてやればいい。でも、気づいたことがあれば、何でも言ってやる”って、すごく背中を押してくれるんです”と、事務所の先輩でもある彼との共演を頼りにしている様子だった。

 また、後にラインハルトの部下となって覇業を支えるミッターマイヤー(根本正勝)とロイエンタール(藤原祐規)という、もう一組の親友同士との出会いも本作ではフィーチャー。互いに“堅物の平民”“女たらしの下級貴族”と呼び合いながらも、ピンチに陥ったミッターマイヤーをロイエンタールが救う彼らの姿が、ラインハルトとキルヒアイスの関係にも重なって、物語を深みのあるものにする。その4人がアンネローゼを守るため、一致団結して刺客と相争う場面では、ダイナミックなアクションも披露! 他にも、初陣の場となった厳寒の惑星カプチェランカでラインハルトの命を狙う上官との格闘シーン等、いわゆる殺陣が数多く盛り込まれていたのも本作の特徴で、橋本は「単に正確に動くだけでなく、世界観の中で役を守りながらの殺陣というのは難しかった。殺陣と言っても芝居なので」と苦労を述べていた。間宮からも「あまりアクションをガッツリやったことがなかったので、あっちゃん(橋本)とかに基礎の蹴りから教えてもらいつつ、今日も朝から会場のロビーで練習してました!」との発言が。加えて「戦っているのに裏で流れているのがクラシックっていうのは、やっていても気持ちがいい。上品で美しさもあって、銀英伝ならではの世界観」という感想には“なるほど!”と唸ったので、今後の上演作でも注目したい。

 

 戦乱の最中ベーネミュンデの命を受けたクルムバッハ(岸祐二)により、奈落に突き落とされそうになったラインハルトの手をキルヒアイスが間一髪で繋ぎ止める場面では、舞台セットにぶら下がるラインハルトの横でその表情を大写しにした映像が映し出されるという奇抜な演出も。また、スクリーン上で艦隊戦を映し出すCG映像も迫力満点で、そこに差し込まれるナレーションが、さらに戦闘のスピード感をスリリングに増幅させてゆく。ちなみに、ナレーターをアニメ版と同じく屋良有作氏が務めていたのも、従来からの「銀英伝」ファンにとっては嬉しい人選だったろう。

 気品を漂わせながら弟・ラインハルトの身を案じ、控えめな所作でアンネローゼの聡明さを強く印象付けた白羽ゆり。そして彼女への陰謀を張り巡らし、執念深く命を狙う残酷かつ老獪な女性像の中に哀れさを滲ませて、最後には涙を誘ったベーネミュンデ役の広田レオナと、対立する二人の女性を演じた女優陣も、実に魅力的。そんな愛憎劇がラインハルトの覇道の、ひいてはヤンとの戦いの序曲となっていることが実感できる、まさに「銀河英雄伝説」という物語の“王道”の始まりを確認できる舞台だった。

 となれば次回作が気になるのは当然だが、既に第9作「銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜」が今冬、東京国際フォーラム ホールCで上演されることが告知されている。現在、発表されているキャストは河村隆一、間宮祥太朗、貴水博之らお馴染みの面々で、前々作「銀河英雄伝説 第三章 内乱」に続き、河村ヤンと間宮ラインハルトの顔合わせを楽しめそうだ。親友・キルヒアイスを喪った傷を乗り越えるために、偉大な敵を求めて、さらなる戦いの渦中に身を投じてゆくラインハルト。それに相対するヤンの策とは? 銀河の雌雄を決する戦いは、まだ、始まったばかりなのだ。
 

(取材・文/清水素子)

【NEWS!!】
シリーズ最新作11月上演決定!!

舞台「銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜」
2013年11月29日(金)~12月2日(月)
東京国際フォーラム ホールC

<キャスト>
河村隆一 間宮祥太朗
天宮良 石坂勇 伊藤哲哉 宮本大誠 迫英雄
岡田亮輔 玉城裕規 岩永洋昭 はねゆり 三上俊 廣瀬大介 長江峻行 赤木悠真
貴水博之 渡辺裕之 西岡德馬  ほか

<チケット料金:全席指定(税込)>
S席(特典付き) 10,500円/S席 9,500円/A席 8,500円

※9月30日(月)23:59まで
a-ticketにてチケット先着先行予約受付中! お早めに!!
http://www.avexlive.jp/gingagz-at2

<チケット一般発売日>
10月13日(日)10:00~


舞台「銀河英雄伝説」オフィシャルサイト
http://www.gineiden.jp/