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LIVE REPORT

物語はいよいよクライマックスへ――。
舞台「銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜」リポート
2013.11.29~12.2 東京国際フォーラム ホールC

 2011年1月初演から、これまで8作が上演されてきた舞台『銀河英雄伝説』シリーズ。数千年後の銀河を舞台に二大勢力が大艦隊で相争う壮大なステージは、最新の映像技術と斬新な演出、そして役者陣の物語に対する深い理解と愛情によって、1982年の発刊以来1500万部という驚異的ベストセラーを記録した原作小説に匹敵する人気と信頼を獲得した。
 約3年をかけ、外伝も交えつつ原作の第1巻から丹念に辿られたステージは、このたび遂にクライマックスを迎えることに。その引き金となるシリーズ第9作目『銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜』が11月29日に東京国際フォーラム ホールCで初日を迎え、以降4日間7公演にわたって長大な物語の歯車をゆっくりと回してみせた。
 
 タイトルからもわかる通り、本作は来年2月に上演予定の『銀河英雄伝説 第四章 後編 激突』の、ある意味プロローグ的な位置づけの作品である。そこで中心となっているのは、銀河帝国と自由惑星同盟を互いに“激突”させて、漁夫の利を得ようとする第三の勢力・フェザーン自治領の黒い策謀。それを利用して宇宙の覇者にならんとする銀河帝国軍のラインハルト・フォン・ローエングラムと、思わぬ窮地に追い込まれる自由惑星同盟軍のヤン・ウェンリーという二人の主役の強烈なパーソナリティー。そして彼らを巡る人間模様だ。
 
 幕が開いて、まず圧倒されたのが、それぞれの部下を従えて軍服で登場したヤン役・河村隆一と、ラインハルト役・間宮祥太朗の見事なまでのキャラクター描写力である。今回でヤンを演じるのが3度目となる河村は、さすが原作小説の大ファンなだけあり、凡庸に見せながら奥底に深い哲学を秘めたヤンという人物を、その柔和な表情と飄々とした口ぶり、肩の力の抜けた立ち居振る舞いだけで的確に表現。対して4度目のラインハルトとなる間宮は長いマントを翻し、堂々たる佇まいと張りのある発声、金髪碧眼の怜悧なヴィジュアルで、21歳の帝国元帥という非現実な役所を現実のものとする。まさしく、それぞれがヤンそのもの、ラインハルトそのものであり、ヤンが柔ならばラインハルトが剛と、正反対のムードを漂わせる彼ら自体が、敵対する二大国の縮図でもあるのだ。
 
 しかし、間宮自身が「今回はキルヒアイスが亡くなってからの話なので、キルヒアイスの影を感じさせるような魅せ方をできたらいい」と語っていた通り、今作のラインハルトは大望に向かって走る強さだけでなく、親友を失くして惑い、悩む弱さも見せるのが最大の特徴。劇中のヒルダ(折井あゆみ)いわく“鋭く研ぎ澄まされたナイフ”が、彼の最期の地となったガイエスブルク要塞では悲劇の残像に悶え苦しみ、キルヒアイス(福山翔大)の幻影に向かって“私は必ず宇宙を手に入れる。お前との誓いを果たすために”と語りかける間宮の大熱演には胸が詰まるばかり。と同時に、自らの半身をもぎ取られた痛みが、ラインハルトを野望へと突き動かす最大の推進力となってしまった悲しい現実を突き付けられ、『銀河英雄伝説』という物語が血の通った生身の人間たちのドラマであることを思い知らされるのだ。
 
 対するヤンにも、ルビンスキーの計略に踊らされた同盟政府によって、査問会への出頭命令が下り、駐在するイゼルローン要塞から首都ハイネセンへと赴くことに。河村いわく「戦争の天才でありながら、人を殺したり戦争をオモチャのように扱っているフェザーンやハイネセンにいる政治家たちを恨んでいるような側面もある」ヤンは、戦争賛成派の政治家たちにとって煙たい存在でしかないのだ。民主主義を遵守するヤンにとって、国民に選ばれた政治家たちは従わざるを得ない存在ではあるが、人の命よりも国の利益を優先して戦争を肯定する彼らに、査問会の場でヤンは遂に言い放つ。
 
「人間の行為の中で、何が一番卑劣で、そして恥知らずか? それは権力を持った人間が安全な場所に隠れて、戦争を賛美し、また、他人に愛国心を強制し、戦場へ送り出すことなんです!」
 
 第一幕のラストを飾るこの場面は、今作の河村ヤン最大の見せ場であったと言えるだろう。民主主義国家の腐敗を目の当たりにし、ふざけた素振りの裏で失望と苛立ちを募らせ、そして耐え切れずにシンガーならではの力強さで一喝するその爆発力には、一貫した感情の流れとヤンの強い信念が見て取れた。弱さを見せたラインハルトと、普段は見せない強さを露にしたヤン――。単に相反し、敵対するだけでないヤンとラインハルトの関係性は、もちろん間宮も見破っていたところだった。
 
「ヤン・ウェンリーとラインハルトは鏡だと思っているんです。映り方は違うけれど、目指している方向は同じで、それが平行線で交わらなかったから、こういう結果になってしまった。もし交わっていれば銀河の歴史は全然別のものになっていたんだろうなと考えるので、そういった意味で今回、僕が好きなのが査問会のシーンなんです。ヤンにも自分の意志を言い放つ一面があって、ラインハルトにもキルヒアイスに見せる柔らかい一面がある。相反しているわけじゃなく、映り方が違ってくることによって見えてくるものがあるから、僕も河村さんのヤンを見て“じゃあ、自分はどういう映り方をしようか?”と考えてやっているんですよ」
 
 そう囲み取材で語った間宮に、河村は「ホントは二人仲良く出来るんですけど、悪いオジサンがいるんで。どうしても今回はルビンスキーに、まんまとハメられているんですよ」と返したが、そのルビンスキー役・西岡德馬の老獪で抜け目のない“狸親父”っぷりも実にお見事! 自分の手は汚さず、権謀術数と財力をもって銀河を支配しようとするルビンスキーという人物を、歪んだ深味ある声と身振り手振り全てを駆使して嫌味たっぷりに演じ、「私は非常に平凡な人間。ただ、強いて言えば、芝居に対する情熱、探求心みたいなものは負けない」との言葉を証明してみせた。その庶子にして補佐官であるルパート・ケッセルリンクを演じた廣瀬大介も印象的。中性的なトーンと物腰が、自治領主・ルビンスキーに取って替わろうとする野心を妖しく透かし見せ、フェザーンという勢力の魑魅魍魎ぶりを象徴する。ルビンスキーの言葉を借りるなら「フェザーンが脚本と演出を担当する。踊るのはヤツらだ」ということか。
 
 彼らの謀略によって、ヤン不在のイゼルローン要塞にガイエスブルク要塞をぶつけるという作戦が、帝国軍により敢行されることに。その戦闘は客席通路まで使ったダンスと映像によって表現され、現実の舞台ではシェーンコップ(岩永洋昭)を中心とした殺陣が、映像では戦闘艇によるスピード感あふれる接近戦が観客の目を釘付けにし、実際には決して味わうことのできない銀河での戦いを仮想体験させてくれる。
 
 しかし、そこでせめぎ合う人間ドラマは、どこまでも生々しい。例えば、『銀河英雄伝説』について「今、生きている世の中に、ちゃんと当てはまるような内容」と語った渡辺裕之は、ストーリー的には本作の直前にあたる『第三章 内乱』のラストで帝国から同盟へと亡命したメルカッツ提督を、思慮深さを滲ませて穏やかに続演。今回はヤン留守中のイゼルローン艦隊を預かり、かつての味方と戦火を交えることになったため、シャルチアン艦長(大力)にスパイの疑いを掛けられながらも、見事にイゼルローンを死守して艦長と和解の握手を交わすというエピソードには心温まった。
 
 対照的に背筋を震えさせたのが、これが4度目となる貴水博之のオーベルシュタインである。参謀長としてラインハルト陣営における“No.2不要論”を朗々と唱え、顔色一つ変えずにキルヒアイスの死去を“良し”とする冷徹非道ぶりは、ここに来て一つの完成形に。抑揚おさえた張りある美声で放たれる「御意」の一言から漂う、何とも言えぬ不気味な響きが、オーベルシュタインという人物の妖怪じみた恐ろしさを、何より雄弁に物語る。
 
 そのオーベルシュタインに、現在はラインハルトが座るNo.1への興味を見抜かれて、持ち前のクールな色気に不穏な空気が混ざり始めたロイエンタール(玉城裕規)。そして、そんな親友を諌める熱血にして豪放なミッターマイヤー(岡田亮輔)と、帝国の双璧コンビもキッチリと対照的な持ち味を提示。また、初陣の恐怖に打ち勝って武勲を立て、ヤンの一番弟子として冷静な戦術分析も果たすユリアンミンツ役の長江崚行、ヤンの忠実な副官にして、彼の淡すぎる恋心を無意識に煽るフレデリカ・グリーンヒル役のはねゆり等々。「第三章 内乱」から引き続いてのキャストも、よりいっそうキャラクターの個性を掴み、原作ファンから見ても“これぞ!”と思える人物像を見せてくれたのは、嬉しいかぎりだ。
 
 カーテンコールの後には、河村隆一の手によるテーマ曲「Searching for the light」を出演者全員で合唱。昨年の春に上演された『第二章 自由惑星同盟篇』、今年春の『第三章 内乱』に続いて三度目となるフィナーレの光景も、カンパニーとしての一体感の高まりの結果、今やゴスペルのように壮大かつ神聖な響きを持って観る者の鼓膜を震わせる。
 
 さて、物語のほうはヤンが無事イゼルローンに戻り、再び平和が訪れたのも束の間。なんと銀河帝国の幼い皇帝が誘拐され、自由惑星同盟に亡命するという大事件が勃発する。これを大義名分に、ラインハルトは自由惑星同盟に正面切って宣戦布告。ここから如何なる戦いが行われ、どんな結末が訪れるのか? それは来年2月12日から青山劇場で上演される『銀河英雄伝説 第四章 後篇 激突』に委ねられることとなる。
 こちらのキャスト&スタッフ陣も続々と発表が為され、河村、間宮、貴水、渡辺のメインキャストの続演だけでなく、外伝で主演を務めた中川晃教。そして過去3作品に参加したKis-My-Ft2の横尾渉、二階堂高嗣に加え、新たにnoon boyzの真田佑馬、野澤祐樹の出演も決定した。さらに、演出は代表作『月はどっちに出ている』等、映画監督として数多くの受賞歴のある崔洋一が担当するというのだから見逃せない。まさしく第10作、そして約13万人を動員してきた舞台シリーズの最終章に相応しい布陣である。
 
「(『銀河英雄伝説』の登場人物たちは)おのおのの立場では精一杯自分の正義を貫いているんですよね。一人ひとりは決して自分には嘘ついてない。だからこそスレ違ってぶつかっていくわけで、今の世の中というのも、こうやってスレ違いながら摩擦や衝突が起きているのかな?と思う部分がたくさんあります。で、僕が『銀河英雄伝説』の1ファンとして思うのが、今回の『激突前夜』、そして来年行われる『激突』のお話は、たぶん一番盛り上がるところじゃないかと。この『激突前夜』を観ると、次が早く観たい!と感じていただける、そんな作品になっていると思います」
 
 囲み取材の際、そう語った河村の言葉通り、今や次回作『激突』への期待は頂点まで膨らんでいる。己の信じる道を進むが故に、交わることなくスレ違ってゆく、この名将たちの未来は果たして……!? 全ては2014年2月に明かされることとなる。

(取材・文/清水素子)

NEWS!!
シリーズ10作目にしてついに完結!
舞台「銀河英雄伝説 第四章 後篇 激突」20142月上演決定!!
 
舞台「銀河英雄伝説 第四章 後篇 激突」
2014年2月12日(水)~3月2日(日) 東京・青山劇場 全21公演
※上演時間はオフィシャルサイトにてご確認ください。
 
【原作】田中芳樹「銀河英雄伝」シリーズ(創元SF文庫刊)
【演出】崔洋一
【出演キャスト】
河村隆一
横尾渉(Kis-My-Ft2) 二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)
真田佑馬(noon boyz) 野澤祐樹(noon boyz)
渡辺裕之 天宮良 IZAM 山口馬木也 井田國彦 増澤ノゾム 伊藤哲哉
HARUNA(SCANDAL) はねゆり 中山由香 中村誠治郎 平田裕一郎 三上俊 小谷嘉一 大前喬一
間宮祥太朗
中川晃教
貴水博之 ほか
 
【チケット料金】全席指定 11,000円(税込)
【問い合わせ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~19:00)
 
★チケット一般発売 1月26日スタート!
詳細決定次第、オフィシャルサイトにて随時発表! お楽しみに!!
http://www.gineiden.jp/gekitotsu/
 
NEWS2
見逃した方も、もう一度観たい方も!
『銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜』12月1日公演
現在「ニコニコ生放送」にて有料配信中!
2014年1月31日(金)まで
 
舞台『銀河英雄伝説 第四章 激突前夜』
12月1日(日)昼公演 河村隆一スペシャルコメント付き
【配信日時】配信中
【価  格】1500pt (1pt=1円)
【URL】http://live.nicovideo.jp/watch/lv159332397
 
舞台『銀河英雄伝説 第四章 激突前夜』
12月1日(日)夜公演 間宮祥太朗スペシャルコメント付き
【配信日時】2013年12月21日(土) 21:00~
【価  格】1500pt (1pt=1円)
【URL】http://live.nicovideo.jp/watch/lv159332734
 
※コメント入力は生放送視聴時のみ可能(タイムシフト視聴時は入力不可)
※ネットチケットは2014年1月5日(火) 23:59まで購入可能

【購入方法】http://info.nicovideo.jp/netticket/
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